『パン屋のイーストン』巣山 ひろみ

2017.08.04 by 金子文

 

童話作家 巣山 ひろみさん初の絵本「パン屋のイーストン」

お友達の童話作家巣山 ひろみさんの
絵本「パン屋のイーストン」が出版されました。

ひろみちゃんはパン屋さんで
働きながら執筆活動をしていて、

『逢魔が時のものがたり』では
“読者を魅了する卓越した文章力に
作者の力量を感じる”と評されて児童文芸新人賞を
受賞した実力派の童話作家さんです。

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(2013年6月15日 読売新聞)

 

さあさあ ふくらめパンのきじ ふくふくもくもく ふくらんで
おいしいおいしいパンになあれ

イーストンは森のパン屋
粉としおときれいな水に、とっておきの魔法を
かけて、おいしいパンをつくります。

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「イーストンのつくるパンは、どうしてこんなに、おいしいの?」

へそまがりのお客さんや、つむじ雨がやってきても、
やきたてをよろこぶかおが、みたいから。
とびきりのパンをとどける、イーストンのおはなし。

「パン屋のイーストン」オビより

挿絵のイーストンの手をみてください。

イーストンは両手でパンをこねています。
イーストンは“職人”さんなんです。

パン屋さんの絵本はたくさんあるけど、
イーストンを“職人”として捉えているところに
ひろみちゃんのこだわりがあります。

この物語は「仕事」をテーマに”働く”ということ
についてひろみちゃんからのある願いが込められて
います。

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物語はテンポのよい文章でイーストンがパンを焼く様子や
かぐわし森の仲間たちとの会話が生き生きと描かれて
います。

登場人物の中で私が好きなのはこの子!

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ちょっぴり素直になれないへそまがりのエッピ。

不機嫌な態度で口ではいじわるなことをいうけど、
実はピュアな女の子。

エッピの心の様子をエッピの髪の毛の
ゆれぐあいや、後ろ姿の描写で丁寧に表現されています。

そして

かぐわし森に”あめまねき”がやってきて大雨が降り、
イーストンのお店は大変なことになってしまいます。

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イーストンはだいじな予約のパンを焼くことができるのでしょうか。

イーストンの絵本ができるまで
金子
今回、初の絵本の出版おめでとうございます。この絵本が出版されることになったいきさつを教えて下さい。
巣山
ありがとうございます。
実はこの原稿、2年前に書いていた原稿なんです。
私はこの原稿が絵本になることはないとほぼ諦めていましたが

今回ご縁があって絵本を出版することができたのです。

校了のときに編集者さんが
「こういう絵本を作るのが、わたしの夢でした」
と言ってくださいました。

自分の創作がだれかの夢になるなんて、
なんて光栄なんだろうと思いました。

また、出版社の方でポストカードを製作してくださいました。

佐竹 美保先生の絵が大変美しいです。

表の切手を貼るところにコック帽が描かれているなど、
とても丁重に作られています。佐竹 美保先生のお力は言わずもがな、
この隅々にいたる気の配り方は、
担当編集者さんの熱意なのだと思います。

 

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金子
ひろみちゃんと熱意のある編集者さん、美しい挿絵を書いてくださった佐竹 美保先生の3人の想いがあわさって素敵な絵本に仕上がったのですね。
この絵本でひろみちゃんが伝えたいこと
金子
ひろみちゃんがこの絵本で伝えたかったことは何ですか?
巣山
“働く”ということをすごく考えました。
今の時代、若い人が最近すごくキツイ思いをして働いていたり、
働けなかったりしています。

それぞれの人が自分にできることで働いて元気に生きていけたらいいなぁ
という願いを込めて書きました。

この絵本ではそれぞれの登場人物が仕事をするように書いています。

子グマたちも一緒に仕事をします。
誇りをもって、仲間と一緒に働く喜びを伝えたかったです。

今回のイーストンの中ではまだだしていないのですけど、
いろんなキャラクターを出したいなと思っています。

いろんな人がその人のままで受け入れられる世界、
その人なりの仕事があって

それでお金を儲けるというだけじゃなくて、

その人なりにできることで人の役に立つことができたら
それもその人の仕事になりますよね。

そして

自分の仕事ができないときの失望
仕事ができるようになった喜びを書いていきたいなと
思っています。
物語の世界は理想だけど、

その人のそのままの姿でみとめあって
その人ができるだけの仕事をして誇りをもって

みんなが生きていけたらいいなぁ。

そんな想いを込めて書いています。

金子
イーストンはシリーズになるのですか?
巣山
そうですね。シリーズをめざします。

ひろみちゃんの頭のなかには、かぐわし森でのすてきなお話が
たくさん展開されているようです。

次作はかぐわし森にどんなキャラクターが登場してどんなドラマが
生まれるのでしょうね。

子どもたちに仕事することの誇り、仲間と力を合わせる喜びを
感じてもらえたら嬉しいです。       巣山 ひろみ

 

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そして絵本の最後には
「ふんわりコック帽のジャムパン」のレシピがついています。

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このレシピを載せるまでの経緯を
ひろみちゃんが話してくれました。

巣山
わたしにとって、絵本というのは初めてだったのですが、
もうひとつ、この本の中で初挑戦しているのが、
パンのレシピ製作です。

最初、編集者さんから言われたのが、
「物語に出てくるジャムパンのレシピを作って載せましょう」
だったのが、「コック帽の形にできませんかね」と言われ、
試作してみるも、どう見てもネコの手にしか
見えないパンになってしまいました。

横向きじゃなくて、縦に作ったらどうかね…等々、
勤めているパン屋のみんなにアドバイスを
いただいて作りあげたのが、
「ふんわりコック帽のジャムパン」です。
ありがとう、パン屋のみんな!

レシピのページのイラストもわたしが描いています。
これも、初挑戦。

パン屋さんのみんなに協力してもらって
出来たレシピなんですね!

このレシピの挿絵も
本人は”いたずら書き”と謙遜していますが、
優しいタッチでわかりやすいし、一生懸命さが伝わってきて、
好感がもてます。

出会いに感謝して

童話を書き始めたきっかけ
金子
ひろみちゃんが童話を書こうと思ったきっかけはなんだったのですか?
巣山
子どもが小学校に上がった年に、
子どもの洗濯物をたたんでいた時にふと
このまま子どもにべったりになってはいけない、

うざいお母さんになりたくないと思いました。
自分も何かしようと思ったときに
昔の夢を思い出し童話を書き始めました。

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1997年に『十月の旅』で「広島市民文芸」童話部門で3席に
なりました。この授賞式で出会った6名で文芸サークル
「天の川」をつくり、毎月集まって合評会を始めました。

萩尾 望都先生にあいたくて
金子
最初は雪にまつわる話をよく書いていたんですよね?
巣山
そうそう、作家の萩尾 望都先生にあこがれていて、
萩尾 望都先生にお会いしたくて雪にまつわる話ばかり
書いていました。
萩尾 望都先生が「ゆきのまち幻想文学賞」の審査員をされて
いたので、この文学賞に入賞すればお会いできると思ったのです。
金子
萩尾先生には
会えたのですか?
巣山
会えました!
2003年に「ゆきのまち幻想文学賞」に入賞することができ、
雪深い青森での授賞式でお会いすることができて感激でした。

その後2010年春に国土社さんから
「雪の話を書きませんか?」と言って頂き、
真夏の暑いさなかに
汗をかきながら雪の話を書きました。
それが初の単著出版となった
『雪ぼんぼりのかくれ道』です。

 

 

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(ゆきぼんぼり)

日本人の血に受け継がれてきた「畏怖」
金子
怖い話も書いていますよね?テーマが”雪”から”ホラー”に変わったのは
どうしてなんですか?
巣山
それも国土社さんから声をかけてもらったからなんですね。
私たちのサークル「天の川」で同人誌を作って出版社に送っていました。

国土社さんが怪談図書館という
怖い話のシリーズをいろんな作家さんに書いて
もらうという企画をされた時、
私たちのサークルにも書いてみないかと
声をかけて下さったのです。

そこからホラーを書き始め、2009年に怪談図書館12
『ホラー遊園地で待ってる』に『霊界から来たカラス』を掲載して頂きました。

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金子
おおっ表紙の絵からして怖いですね〜。
今までホラーをまったく書くことがなかったのに、これがきっかけで
異界に興味をもち、児童文芸新人賞を受賞した
『逢魔が時のものがたり』に繋がったのですね。
巣山
そうですね。日本人が持っている「畏怖」の念を表現したいと思いました。

そして2014年『だれがアケル!?呪いのトビラ』(PHP)の中に『蝶』
という作品も掲載されました。

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金子
これも表紙を見ただけで怖いですね〜。
ほのぼのした作品から怖い作品まで、
ひろみちゃんの幅の広さに感服します。
出会いで開けた出版への道
金子
ひろみちゃんの原稿が本になるまでにたくさんの人との出会いがあったのですね。
巣山
本当にたくさんの方との出会いがあって
本を出版をすることができたので、
出会いに感謝しています。

後になってわかったことですが、

国土社さんから私たちのサークルに怪談図書館に
書いてみませんかと声がかかったのも
広島の作家、中澤 晶子先生が間に入って下さっていました。

国土社さんが文芸サークルにいきなり原稿を書かせてくれる
はずもなく、中澤先生に「天の川」について
問い合わせがあったそうです。

それで私たちの同人誌を読んで下さっていた中澤先生が
国土社さんに「あのサークルはいいよ」と推薦して下さった
のでした。

それで私たちのサークル「天の川」に声がかかって
4人が原稿を書いて4人とも採用されて怪談図書館に
掲載してもらうことができたのです。

 

金子
『逢魔が時のものがたり』の出版もある人
との出会いがきっかけだった
と聞きました。
巣山
そうなんです。京都の沢田 俊子先生との出会ったことで
『逢魔が時のものがたり』
も本にすることができました。

2009年から4年くらい沢田 俊子先生が広島で開催された童話教室に
入っていました。

それまで公募はしても本の出版には繋がらなかったのですが、
沢田先生とであったことで本を出版できるようになりました。

沢田先生が誘って下さって児童文芸家協会に入りました。
東京での集まりに参加するようになり
作家仲間や編集者さんとのつながりができました。

 

『逢魔が時のものがたり』の原稿も沢田先生にみてもらい、
学研に送りましたが、半年間なんの連絡もありませんでした。

 

半年後に児童文芸家協会のパーティが東京で開催されたので
私も参加しました。

ちょうど学研の編集者さんも来られていたので、沢田先生が私を
編集者さんに紹介して下さいました。

編集者さんに原稿を送ったことを話すとパーティの後、

編集者さんが『逢魔が時のものがたり』の原稿を
取り出して読んで下さったのです。

それからまもなく電話がかかってきて、出版が決まりました。

毎年、京都で沢田先生が主催される勉強会には今でも
参加していて、ちょうど来月、京都に行くんですよ。

沢田俊子先生のHPはこちら
http://www.tombo-road.jp

物語を書くということ
金子
ひろみちゃんが童話を書く上で大切にしていることは何ですか?
巣山
私にとって物語を書くということはどういうふうに自分が生きるか、
その生き方を探ることなんですね。

子どもを喜ばせてあげようという気持ちも必要なんだろうけど、
自分の生き方を探りたいという想いが強いです。

金子
今まで書いてきて、今の段階で見つかった答えは何ですか?
巣山
私の生き方として人と丁寧に接しようと思いました。

心が通じ合うのが喜びだと思います。

物を書くときにひとつひとつ言葉を選んで探していくというのは
人と接するときに言葉を選んで自分の気持ちを伝える努力を
していくことに繋がっています。

金子
言葉がけを意識することでまわりの人との関係がかわってきましたか?
巣山
変わってきました!
自分が心が開けるようになったし、
相手の方も心を開いてくれるようになりました。

 

金子
心を開いて付き合える人がいるから出版にも繋がったのでしょうね。
巣山
本当にみなさんによくしてもらっています。

うまくいっていない時こそ真摯に言葉を伝えたいと
思います。

人と関わって行く中で自分が成長します。
人とどう関わっているかで言葉が変わります。

人にもまれていると物語の中でキャラクターに
言わせる言葉が深くなります。

私が書き出してから私の知らない間に力になってくれる人が
増えてきました。

身近な人にこそ、難しいけど言葉がけを大事にしたいですね。

 

ひろみちゃんは、一見おっとりしているように見えますけど、
「鋭い男前の文章」を書くと言われるそうです。

そのギャップも守備範囲の広さとともに
ひろみちゃんの魅力の一つとなっています。

本を通して子どもたち感じて欲しいこと
金子
ひろみちゃんの本を通して子どもたちに何を伝えたいですか?
巣山
私の願いとしては本を楽しんで、夢中になってその本の世界で遊んで欲しいです。

自分が子どものときに本を読んでいたのは、
それが自分のためになるからとかではなく、
その世界に入って遊んで楽しかったからでした。

現実の世界とは違うもう一つの世界を与えて
もらえることが喜びだったのです。

だから子どもたちにも本の世界で遊んで欲しいです。

子どもたちが寝っ転がって、夢中になって読んでくれるような
物語を書きたいです。

本はただ面白いだけじゃなくて、主人公の成長物語です。

だから子どもたちには主人公と一緒に冒険してちょっと成長して帰って
きて欲しいです。

現実に向き合う力が身につくと思うからです。

巣山 ひろみさんの作品紹介

「ゆきぼんぼりのかくれ道」

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雪国で不思議な体験を通して成長する
少女の物語。

おばあちゃんに会いたくて奥野郷にひとりで
やってきた果奈。

おばあちゃんのために、
小さなかまくらの中にろうそくを
ともす雪ぼんぼりを作りはじめます。
その時、ウサギにであい、
ウサギを追ううち、土地の神々が
住む「かくれ道」に迷い込んでしまいます。

果奈はもとの世界にもどれるので
しょうか。

人は孤独ですが、生きて歩んでいく道々には、この人と会えてよかった、
この人のためになにかしたいと思うできごとがあり、このとき、絆が生まれます。
そんな絆の輪がつなぎあわさっていつしか、自分とこの世界を結びつけるものに
なるのではないかと、私は思うのです。   巣山 ひろみ

 

 

「逢魔がときのものがたり」

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彼岸花、月、雨、泥、桜
日が落ちてなお明るさの残るたそがれ時は
この世と魔界が交差する時間。

心に闇を抱えた子どもたちが魔物の世界に
迷い込んでしまいます。

逢魔が時に子どもたちに起こる5つの不思議な物語。

この作品でひろみちゃんは児童文芸新人賞に
輝きました。
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(2013年6月15日 読売新聞)

日が落ちて昼と夜がひっそり入れかわっていく。異界のものたちとふいっと、でくわすのはたしかそんなあやふやな時間帯のような気がしてきます。
逢魔が時を感じる日本人の感性、大事にしたいと思います。「逢魔が時」に私
なりのイメージを重ねて物語にしてみました。    巣山 ひろみ
「おばけのナンダッケ」シリーズ

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ナンダッケのいくところではトラブルが
大発生!次はどんな町でトラブルを起こすのかな?

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ナンダッケは食いしん坊おばけ。ナンダッケの食べ物は人の「考え事」
次々と「考え事」をたべられてなんでもかんでも忘れてしまった町の人たちは・・・?

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人の「考え事」を食べてまわる食いしん坊おばけのナンダッケは
あるひ、「わくわくする考えごと」をたくさんしてくれる女の子にであった。
ところがその女の子が大事なお使いに行くことになって・・・。

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食いしん坊おばけのナンダッケはあるとき、「いっしょだとおいしいね」
といっておいしそうにおやつをたべている男の子たちを見かけた。
へぇいっしょだと味が変わるのか?ナンダッケには分からない。そんなとき、
いきなり男の子に声をかけられて・・・。

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(2013年12月19日 中国新聞)

巣山 ひろみさんプロフィール

1997年
『十月の旅』で「広島市民文芸」童話部門3席
この授賞式でであった6名で毎月集まって合評会を始める。
後の文芸サークル「天の川」

2000年
『おまけの引き出し』で「JOMO童話賞」佳作
全国から1万点の応募作品の中からの13点に選ばれる。

2003年
『十五歳』で「ゆきのまち幻想文学賞」入選
この後9作が入賞し、それぞれ小作品集に収められる。

2008年
『声』で「中国短編文学賞」優秀賞
同年、中国新聞夕刊に『あかつき月夜』を連載

2009年
『霊界から来たカラス』がアンソロジー怪談図書館12
『ホラー遊園地で待ってる』(国土社)に所載

2010年
『雪の翼』で「ゆきのまち幻想文学賞」長編賞受賞

2012年
『雪ぼんぼりのかくれ道』(国土社)

『逢魔が時のものがたり』(学研)
より出版

2013〜2014年
『おばけのナンダッケ』シリーズ(国土社)
より出版

2014年
『蝶』がアンソロジー
『だれがアケル!?呪いのトビラ』(PHP)
に所載

2014年『児童文芸』(日本児童文芸家協会発行)
に「石の舟は月へ向かう」を一年間連載。

2016年
『パン屋のイーストン』(出版ワークス)
より出版

 

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